職としての建築設計

実際に建築設計の職に就いてみると・・・

大きな物を作っているんだという実感を得られるので、建築関係の仕事をする人は毎日がとっても充実した気持ちでいられるでしょうし、 いざ完成した建築物を目の当たりにしたら感無量で涙が零れそうにもなるでしょう。 つまりとっても遣り甲斐のあるお仕事なのです。 今後その建物の前を通るたびに「元気にしてるか、オレも元気だぜ」と心の中で呟いたり、「よう、あれから3年か。少し大きくなったんじゃないか?」と 声を掛けるごとに喜びがふつふつと湧き上がってもくるでしょう。 そんな建造物との会話も愉快でしょうが、クライアントからも喜びの言葉をかけてもらえるので本当に天にも昇る気分にさせられてしまいます。 そこを新居に新生活をスタートするカップルから「こんなに素敵な住宅を私達の為に建ててくれてとっても感謝しています、嘘じゃないですよ」と 潤んだ目で見つめられながら述べられたら、こちらの涙腺も緩くなってしまうでしょう。 住宅用の建物でなくても、そのエリアのシンボルになりそうな建造物なら大きな話題となるでしょうしそれを利用する人が多ければやはり満足感を得られます。 実績が誰の目にも明らかなのも自身の向上心を奮い立たせるのではないでしょうか。

このような建築設計のお仕事ですが、どんな人が向いているのか、どのような能力が求められるのかご存知でしょうか。 まずは建築や設計の知識が必要になりますがこれは当たり前すぎるので、わざわざ詳しく掘り下げる意味はないでしょう。 業務では依頼主との打ち合わせがとても重要なので、コミュニケーションの能力が高い人物でないと困ることになるでしょう。 オーダーメイドの注文になるので密にやり取りをして、細部まで相手の希望を実現せねばならないので理解力も不可欠となります。 相手の要望をしっかり理解できていないと、打ち合わせ後にプランを提案しても 「わたしの話ちゃんと聞いていたんですか?これはイヤだって言ったじゃないですか。この前伝えた通り黄色い材質をベースにして下さいよ」と 苦情を言われることを延々と繰り返すだけになってしまうかもしれません。 もしも無理な要望で変更せざるを得ないのであればそれを納得させてからでなければこちらの提案を受け入れてはもらえないでしょうし、 打ち合わせをちゃんと行える能力がないと両者ともにウンザリしてしまいます。 時には強引に思える理論で相手の希望を打ち砕き、こちらの意見を押し通す強さもなければならない日がやってくるでしょう。

このねじ伏せる能力、丸め込む力、格好良く表現してプレゼンテーション力も設計士なら持っていたいスキルのひとつです。 余裕があれば時間をかけてゆっくり説得してもいいのですが、全ての事柄を1つずつそうしていては打ち合わせだけで年が暮れてしまいます。 無益と思われるやり取りをショートカットするには強引さも必要なのです。 それを相手に感じさせてはいけないので、納得させるためのプレゼンテーション力が求められるかもしれないというわけです。

そこで同時に必要になるのがクライアントを喜ばせる発想力でしょう。 「その希望には応えられません、設計上不可能に近いですしどうしても実現させたければ大幅に予算オーバーすることになります。 ですがかわりにこれならどうでしょうか?」と依頼主が思いも付かなかった代案を提示できれば、 「なんて有能な人なんだろう、この設計士に任せておけば安心そうだ」と思わせることができます。 信用を勝ち取れればもうこっちのもの、以後の打ち合わせもスイスイ進むでしょうし、アドバイスも真剣に聞き入れてくれるでしょうから仕事がやりやすくなります。 こうした打ち合わせで役立ちそうな能力は経験を積むごとに磨きがかかってくるので、就職前に鍛えることは簡単ではないかもしれません。 なのでそれを裏付けるための設計や建築に関する知識、物理学なんかを集中して習得して将来に備えるのがいいでしょう。